理性という言葉に対して、感性という言葉はやや分が悪い。
感じることは個々人で多様であり、また偶然的なことであると思われ、他方の理性は普遍的で客観的な思考であると考えられているからです。頭に血がのぼるのが感性で、これを静めるのが理性というわけです。
しかし、「けっぱるぞ(57)世界を知る力」(2010年3月25日)で紹介したように、寺島実郎さんは加藤周一さんとの対談で感性こそが知性の源であることを再認識し、その重要性を主張していました。
さて、「はんかくさい(14)値引きに勝る商人的工夫?」(2010年4月1日)に登場した小阪裕司さん、単なる金儲けのアドバイザーではありません。感性情報という聞きなれない言葉を使ってビジネス・モデルを説明しています。引き続き登場してもらいましょう。
情報が価値あるものになるためには、感性が必要であると言います。
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「この店ではあるとき掃除中に商品である人形を落として壊してしまった。足の部分が粉々に割れてしまい、売りものにならない状態だった。何とか接着剤で修繕したものの、明らかにキズもの。そこで、店ではキズものであることを明示し、さらにPOPにこう書いた。
――私は人形です。オリンピックを目指して体操の練習をしていました。平均台から落ちて足を負傷。手術は成功。夢は実現しませんでしたが、第2の目標で顔晴(がんば)ります。こんな私ですが、お友達になってくれませんか?
すると、来店した50代のご婦人が店員を呼びとめて、こう言った。
『この人形を二体ください』
女性スタッフが『一体は不良品ですので、一体しかございません』と答えると、そのお客さんは、こう返した。
『いいんです。ケガした人形も含めて、二体欲しいのです』
そうして彼女は二体の人形とともに、ここに貼られていたPOPまでも一緒に買っていった。もちろん二体とも正価である」(『ビジネス脳を磨く』日経プレミアシリーズ、2008年、102~103ページ)。
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壊れた人形を買う人なんていませんよね。でも、いたんです。
このご婦人、「・・・・・お友だちになってくれませんか?」というPOPがなければ、壊れていない人形でさえ買わなかったかもしれません。店の主は、壊れているという情報に感性を吹き込んで、見事ご婦人の感性と共感したわけです。
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「自分にとって『意味あるもの』として受け取れたもの、それが情報である。
そして、その情報が自分にとってぐっとくるかこないか、それが情報の価値を左右する。ぐっときたものこそが価値ある情報なのだ」(86ページ)。
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小阪さんは、この「ぐっとくる」感性情報がいわゆる"付加価値"とは異なるものであることを力説しています。付加価値はあくまで「工業社会」の発想であり、モノづくりの延長上にある概念だと言うのです。
確かに、壊れた人形をオリンピックをめざした少女に喩えた情報は、付加価値というよりも感性情報と言った方がいいかもしれません。
小阪さんがこだわる、感性情報、実は「エピローグ」で語られている体験が大きく作用しています。
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「僕は、時も場所も超えて、喋々の姿のまま飛んでいく。南米の島ティエラ・デル・フエゴへも、ギリシャ神話のミダス王の宮殿へも」(199ページ)。
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これは左目のまばたきだけで書かれた『潜水服は蝶の夢を見る』の一節です。ファッション雑誌『ELLE』の元編集長ジャン=ドミニック・ボービーは、ある日脳卒中で倒れ、意識や記憶は正常だが、動かせるのは左目だけとなってしまった。自由を奪われた体を「潜水服」と、そして創造力を自由に発揮する自分の心を「蝶」と呼んでいるのです。
小阪さんはご自身の父親の境遇とも重なって、この本に強い衝撃、「ふるえ」を感じたのです。
感性情報とは、この「ふるえ」を感じさせるような、自由な創造力によって生み出されます。
「潜水服は蝶の夢を見る――創造力とまばたきだけで世界を変えられるなら、われわれにはいったい、どんなワクワクすることができるだろうか」(202ページ)、結びの言葉です。
http://www.kiu.ac.jp/mt/mt-tb.cgi/1570
COMMENTS
kiuブランディング研究会様
コメントに気付かず申し訳ありませんでした。
これからもご批判、ご意見をお待ちしています。
宮崎 昭 | 2010年6月12日 19:51 | 返信
いつも興味深く拝見しています。
「ぐっとくる」、「ふるえ」を感じる には、、
感性力を高めるにはどうしたらよいのでしょうか。
ネットで感性力を検索するといろいろでてきますが。
日本ブランド戦略でも、『知力、感性力、人間力』と
ありますが、、
根本は、明るい好奇心かも?
あと、頑張る:顔晴る:願貼る とつなげてみました。
KIUブランディング研究会 | 2010年4月 5日 09:44 | 返信
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