先日、本物の裁判所に出かけてきた「模擬裁判ゼミ」ですが、今度は本物の刑務所に行ってきました。
今回もゼミ生に当日のレポートをしてもらいましたので紹介します。
私たちは北九州市小倉南区にある「北九州医療刑務所」を訪れました。

まず、医療刑務所についてですが、一般的な刑務所と異なり、専門的な医療処置、継続的な医療介護を必要とする受刑者の治療と収容を行っています。施設内には、病床が整備され、刑務官の他に医療スタッフが配置されており、病院と同等の医療体制が整えられています。全国に4カ所あり、各刑事施設からの移送にも対応して、地域ごとに管轄を受け持っています。
北九州医療刑務所では、精神障害受刑者を収容しています。また、精神障害受刑者の介助や補助的作業を行う経理係として一般受刑者も収容しています。衛生面の特徴として、定期的に健康診断を実施したり、感染症対策を特に徹底したりするなど、心身ともに健康且つ健全な状態で社会復帰できるように配慮しているそうです。
今回の訪問では、治療の伴う精神障害受刑者及び一般受刑者の社会復帰を促すための受刑者処遇について学びました。
北九州医療刑務所では、機能向上作業・改善指導をしながら、収容者の更生を図っています。機能向上作業は、高齢又は心身の疾患や障害により、認知的機能又は身体機能の低下が認められる場合など、一般的な生産作業(刑務作業)が難しいとされる者に対し、一般的な作業と似た作業を反復させることで社会復帰に向けた認知機能及び身体機能の維持向上を図る作業です。具体的には、お皿や花瓶などを製作する窯業や小さな折り紙やタイルを組み合わせて絵や模様を作り出すモザイクアートなどの作成を機能向上作業として行っています。施設内の見学の際に、作品をいくつか見せていただきましたが、非常に精巧に作られているものばかりで、いくつか購入したいと思う程でした。
改善指導については、収容者すべてが対象となっており、各々が抱えている問題点に焦点を当てた指導を行っています。
精神障害受刑者に対しては、治療の一環としてスタッフが忍耐強く指導を行っていました。薬物依存者や重大な被害をもたらした者など、問題特性に応じて集団を編成して、再び罪を犯さないように指導を行っています。また、ビデオ視聴によって知識を身につけたり、外部講師の特別講義を行ったり、より深く自身の問題を理解させる機会も設けているとのことでした。
一般受刑者に対しては、犯罪の責任を自覚させ、健全な心身を養い、社会生活に適応した生活態度や必要な知識の習得を目標に実施しています。例えば、窃盗防止指導、アルコール依存回復プログラム、暴力防止プログラム、特殊詐欺事犯指導等です。
特に、社会復帰指導は、円滑な社会復帰のために必要な知識を身につけさせ、関係機関と連携を取り、出所後の就職及び保護等に関して積極的な援助が受けられるように指導を行っています。
今回の見学を通して、北九州医療刑務所が、医療機関として機能しつつ刑務所としての矯正の役割をこなす意義を持ち、今後の高齢社会の中での高齢受刑者の増加や医療ニーズの複雑化に対応していくための重要な施設であることが理解できました。(3年 兼安)
先生からのコメント:当日は、受刑者の生活する制限エリアの見学のみならず、刑務官の方には多くの時間を割いていただき、様々なレクチャーをしていただきました。いただいた資料にもあたりながら、学んだことを詳細に報告してくれました。これを読んだ人にも刑務所の仕組みがよく伝わることでしょう。
今回はこの辺まで。また次回レポートをお楽しみに。乞うご期待。

作成者 法学部 鈴木博康(教授)


