[法学部]対馬釜山実習(花松ゼミ)


法学部・花松ゼミの3年生12名が、2023年9月7日〜11日の日程で長崎県対馬市と韓国・釜山広域市で4泊5日のゼミ実習を行いました。ここ数年は対馬のみでの実習でしたが、コロナの入国制限措置終了にともなって2023年2月に対馬(比田勝)―釜山の高速船航路が再開されたことから、4年ぶりに対馬から韓国・釜山まで足を伸ばすことができました。

ゼミの研究テーマ「地域社会の持続可能性」についてフィールドワークを通して深めようと、まずは国境離島で過疎化先進地である対馬を訪れ、現状と課題を学びました。過疎地や限界集落とよばれる地域の深刻な現状を目の当たりにしながらも、対馬のために日々がんばっておられる市役所職員から地元NPO、観光事業者、企業、漁師、農家、市議会議員、市民の方々まで幅広くお話を伺い、地域の未来と様々な困難、課題をリアルに感じ取ることができました。

とくに、対馬で年々深刻化する海岸漂着ゴミ問題に取り組む一般社団法人対馬CAPPAさん、持続可能な漁業によるコミュニティづくりをめざす合同会社フラットアワーさん、廃校を活用したカフェやレストラン、宿泊施設の運営で地域の拠点づくりを試みる株式会社対馬地球大学さんには、現地フィールドワークのコーディネートでも大変お世話になりました。また、現在メディアで大きな注目を集めている核ごみ最終処分場誘致問題で受け入れ反対を主導する脇本啓喜さん(対馬市議会議員)には、核ごみ問題だけでなく「人口減少を前提にしても暮らし続けられる島のあり方」について大変興味深いお話を伺いました。

対馬滞在中は天候に恵まれ、展望台から釜山の街並みを綺麗に見ることができましたが、釜山に渡る直前には、対馬・比田勝港国際フェリーターミナルで韓国人観光客へのインタビュー調査を行いました。ポストコロナ時代に韓国人観光客をどのように受け入れるのかは対馬にとって最重要課題であり、ゼミ生たちはスマホの翻訳アプリと身振り手振りを駆使して帰りの乗船を待つ韓国人観光客との会話を楽しんでいる様子でした。

わずか1時間半の船旅で到着した釜山では、本実習に毎回ご参加頂いている現代ビジネス学部の山田良介先生のゼミ所属で釜山の東亜大学に留学中の3年生2名と合流し、釜山日本総領事館前に設置されている慰安婦少女像と徴用工像を見学して、日韓関係に横たわる歴史問題の奥深さを実感しました。

最終日は、韓国の市場のなかでも有数の規模を誇る釜田市場を見学した後、アートを使ったカラフルな景観まちづくりで観光地化に成功した甘川文化マウルと、植民地時代の日本人の墓石を家屋などに利用した歴史を掘り起こして地域おこしをめざす碑石文化マウルを視察しました。両地域は、朝鮮戦争時の避難民居住区という共通点を持ち、互いにわずか100mしか離れていませんが、前者の活況ぶりと後者の衰退の差は明らかで、なぜこのような差が生じてしまったのかという疑問を宿題として持ち帰ることになりました。

花松ゼミでは地域社会のあり方を考えるうえで、文献や資料の利用と併せて、「現場に行かなければ見えないこと、気づかないこと」をとくに大事にしています。今回の実習でゼミ生が現地で学んだこと、感じ取ったことが、秋学期のゼミ対抗プレゼン大会やその後の就職活動などでどのように活かされるのか、今から楽しみです。

 

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作成者 法学部 花松 泰倫(教授)