[現ビ] 多文化共生論の授業でイスラム文化を学ぶ — 北九州イスラム文化センターの活動を通して —


2025年6月19日(木)2限の多文化共生論の授業では、北九州市立大学大学院博士課程で環境工学を学ぶ Miftah Hadi氏 をゲストスピーカーとしてお迎えし、ご講話いただきました。

今回の講義では、Hadi氏が運営にも関わる 北九州イスラム文化センター(北九州マスジド) の活動を中心に、ムスリムとして日本で暮らす日々や地域社会との関わりについて具体的にお話しいただきました。

マスジドでは、礼拝の場を提供するだけでなく、クルアーンの勉強会やムスリム同士の助け合いなど、コミュニティの相互支援が積極的に行われています。中でも印象的だったのは、ムスリム同士が知り合い、関係を深めるために月に一度、草刈りや清掃、セメントを敷くといった環境整備活動を行い、その後にバーベキューをしたり、インドネシア料理などを一緒に食べながら親睦を深めているというお話でした。こうした活動を通じて、信頼関係を築きながら、日々の課題や悩みを共有し助け合える関係性を育んでいるとのことです。

一方で、地域とのつながりも大切にしており、月に2回は地域の防犯パトロールに参加しているほか、市民センターでは中高生を対象に文化交流会を開催し、イスラム文化への理解を深める場を提供しています。さらに、北九州市の国際課の方をマスジドに招き、日本語が十分にできない外国人に向けた防災講座を開催するなど、災害時への備えを含めた生活支援にも取り組んでいるそうです。

また、イスラムについての理解が職場で得られにくい場面では、企業の社長をマスジドに招き、直接説明を行うこともあるとのこと。さらに、イード(イスラムの祝祭)の際には、「イスラム教徒にとって特別な日であること」を説明した文書を配布し、職場で休暇が取りやすくなるようサポートする取り組みも行っているそうです。

講義の後半には30分ほどの質疑応答の時間が設けられ、「ハラール食品の入手方法」「マスジドの設立において苦労したこと」「日本の神社や寺院に入った経験」「日本人としてムスリムに対してできることは何か」といった、多様な質問が学生から寄せられました。

中でも、「ムスリムの人たちに日本人としてしかできないことは何ですか?」という質問に対し、Hadi氏が即座に「Be friend(友達になってください)」と答えたことは、学生たちの心に強く残りました。

「イスラムの価値観を押し付けるのではなく、共有し、お互いに尊重し合える関係性を築くことが大切」と語るHadi氏の姿から、多文化共生に必要な姿勢を学ぶことができました。また、「日本の人々をイスラム教徒として尊重し、日本の人々にもイスラム教徒として尊重してもらいたい」と思い、自らの言動にも配慮しているというお話が印象的でした。

若松に400〜500人ものムスリムが集うマスジドがあることに驚いた学生も多く、27歳という若い世代のムスリムから直接話を聞けたことは、学生たちにとって非常に新鮮で刺激的な学びとなりました。

本講義は、異なる文化や宗教を持つ人々とどのように共生していくかを考えるうえで、多くの気づきを与えてくれる貴重な機会となりました。

【記事:大形里美(現代ビジネス学部 教授)】