カルチュラル・スタディーズ(宗教)特別講義を開催しました


インドネシアの女性リーダーから学ぶ「人格形成と共生社会」

カルチュラル・スタディーズ(宗教)では、毎年、国内外で活躍する研究者や実務家を外部講師としてお招きし、多様な価値観や社会課題について学ぶ機会を設けています。

2025年6月19日、インドネシアを代表する女性イスラム学者・ジェンダー研究者である Maria Ulfah Anshor(マリア・ウルファ・アンソール)先生をお迎えし、オンラインによる特別講義を開催しました。

マリア先生は、インドネシア大学でジェンダー研究および社会福祉学を学ばれ、女性の権利、家族政策、子どもの保護に関する研究と実践に長年携わってこられました。伝統派イスラム組織ナフダトゥル・ウラマー(NU)の女性組織であるファタヤットNUの会長を10年間務められたほか、国会議員やインドネシア児童保護委員会(KPAI)委員長を歴任されています。現在は女性に対する暴力国家委員会(Komnas Perempuan)委員長を務めるとともに、ジェンダー公正と社会正義の実現を目指すインドネシア女性ウラマー会議(KUPI)の運営にも深く関わっておられます。

講義ではまず、イスラムの基本原則について説明がありました。マリア先生は、イスラムが唯一神への信仰を基盤とする宗教であり、神と人間との関係、人間同士の関係、そして人間と環境との関係について教えていることを紹介されました。

また、イスラムでは、人間だけでなく動植物や自然を含むすべての創造物は神によって創られた存在であり、等しく神に帰依する存在であると考えられていることが説明されました。そして、人種や民族、性別、社会的地位の違いにかかわらず、すべての人間は神の前では平等であり、人を区別するものは敬虔さのみであるというイスラムの基本的な考え方についても紹介されました。

さらに、イスラムでは男性と女性はともに平等な価値と可能性を持つ存在であり、それぞれが権利と義務を有していることについても語られました。また、民族や宗教の違いを超えて互いを尊重し合うことの重要性が強調され、人と人とのつながりを大切にする「persaudaraan(兄弟愛・連帯)」の精神がイスラムの重要な教えの一つであることが紹介されました。

続いて、イスラムにおける家族観や男女関係、子どもの教育、そして多様な人々との共生についてお話しいただきました。

マリア先生は、イスラム教義において家庭とは、幸せな家庭を築くという共通の目標に向かって、男女が対等な立場で互いを尊重し、尊敬し合い、助け合いながら歩んでいく場であると説明されました。また、自分とは異なる意見であっても、それを自分自身を補うものとして受け入れる寛容さの重要性についても語られました。

さらに、子どもたちには、考え方や行動において極端を避け、中庸とバランスを大切にし、周囲の人々とのつながりや友好関係を大切にする姿勢を教えることが重要であり、そのような価値観は将来にわたって子どもたちの人生をより豊かなものにすると説明されました。

今回は事前に学生から質問を募集し、講演の中でそれらに回答していただきました。家族、ジェンダー、宗教と社会の関係など幅広いテーマについて、マリア先生はご自身の研究や実践経験を踏まえながら分かりやすく説明してくださいました。

講演後のアンケートでは、「イスラムにおける家族観や男女関係についての説明が非常に分かりやすく、人格形成から家庭、そして社会へとつながる考え方がとても腑に落ちた」といった感想が寄せられました。また、「イスラム社会においても、女性が教育や仕事の機会を得られるようにし、差別や暴力をなくして男女平等の実現を目指す活動が行われていることを初めて知った」「イスラム教は厳しい決まりが多いというイメージを持っていたが、信頼や思いやり、責任感を大切にする教えがあることを知り、見方が変わった」といった声も聞かれました。

今回の講義を通じて、学生たちはイスラムやインドネシア社会への理解を深めるだけでなく、多様な価値観を尊重しながら共生することの重要性について考える貴重な機会を得ることができました。

2026年6月19日(金)のカルチュラル・スタディーズ(宗教)の授業において、オンラインで講義をしていただいた際の様子(Zoom画面)。

女性に対する暴力国家委員会(Komnas Perempuan)委員長のマリア・ウルファ・アンソール先生