毎夏、オープンキャンパスでは、法学部企画の一つとして模擬裁判を実施しています。この模擬裁判を当日参加の高校生のみなさんには、「傍聴人」としての役割を担っていただきながら披露していますが、見方によっては、あたかも模擬裁判という「演劇」のようにも思われるかもしれません。そのため、例えば、模擬裁判で使用する起訴状の書面などは、もし単なる裁判の演劇であるとしたら、小道具の一つとして、観客席のみなさんからは遠目にそれらしい書面に見えればそれで十分なはずです。しかし、我々は模擬裁判を刑事法の学びとして行っているので、起訴状の作成一つについてもきちんと確認をしながら作成します。
検察官が作成する起訴状には、そこに書かなければいけないことが決まっています。そしてまた、予断と偏見を与えないようにするために、起訴状には余計な資料を付け足してはいけないことも決められています。実はこうしたことは、刑事訴訟法という刑事裁判を進めていく上でのルール(法律)に明示的に規定があるのです。起訴状をたとえ見様見真似であっても作成(起案)してみるということも、学部の専門科目の「刑事訴訟法」で学んだからこそであって、ゼミではこれらを踏まえ、確認しながら作っていきます。模擬とは言え、なるべく本物の裁判に忠実に再現していくこと、模擬裁判をしながら刑事手続を学ぶというのは、こういう点にもあるのです。
今回はこの辺まで。また次回レポートをお楽しみに。乞うご期待。
作成者 法学部 鈴木 博康(教授)