2024年10月31日から11月1日の二日間、インドネシア大学大学院「戦略・グローバル研究科(School of Strategic and Global Studies)」から、副研究科長のProf. Dr. Eva Achjani Zulfa, S.H., M.H.先生をはじめとする5名の先生方が九州国際大学を訪問されました。
主な訪問目的は国際会議の共同開催の可能性を模索することでしたが、短期間の北九州滞在にもかかわらず、九州国際大学の学生に2コマのレクチャーを行ってくださいました(無償)。
11月1日には、インドネシア語の授業で、Prof. Dr. Eva Achjani Zulfa, S.H., M.H.先生がインドネシアの法制度についてインドネシア語で講義を行いました。先生は、インドネシア各地において古代の王朝が編纂した慣習法が、現在も婚姻や相続などの分野で使われていることを説明されました。
また、オランダ植民地時代に導入された法制度の影響や、インドネシアの現状にそぐわなくなってきた刑法の改正についても言及し、2023年に新たに制定された刑法が2026年から施行予定であることをわかりやすく解説されました。
講義では具体的な事例として、セクハラや姦通罪の扱いについて、男性も被害者となる可能性を考慮する必要があることや、婚姻関係にない男女がホテルに宿泊すると姦通罪で逮捕される可能性があることについても触れてくださいました。これを聞いた学生たちは、旅行の際には気をつけないといけないと真剣な表情で話を聞いていました。
学生たちは、日本と異なる法制度の成り立ちやその変遷を学ぶことで、新鮮な視点を得たようでした。また、質疑応答の時間には、インドネシアのお勧めの観光地や食べ物についても質問があり、世界一美味しい料理に選ばれたことのある「ルンダン」や、道具を使わずに鯨を捕る民族、そして世界的に有名なサーフィンスポットについてもお話ししてくださり、学生たちは興味津々で聞き入っていました。
https://sksg.ui.ac.id/team-members/dr-eva-achjani-zulfa-s-h-m-h-2/
もう一つのレクチャーは、10月31日の比較宗教論の授業で、Jelang Ramadhan, Ph.D.先生により行われました。
先生はカリマンタン出身のダヤック族で、ダヤックの伝統宗教であるアニミズム的な「カハリンガン(Kaharingan)」と、インドネシアにおけるイスラム教、キリスト教、ヒンドゥー教、仏教など他の宗教との関係について、英語でお話しくださいました。
カハリンガンでは、祖先の霊がこの世に存在すると信じられており、手を触れずに空を飛ぶ刀を目撃した体験談や、「スター・オイル(minyak bintang)」と呼ばれる香辛料から作られた油を使うことで、祖先の霊を憑依させたり、刀が刺さらないようにする防御力を得られるといった信仰についても話していただきました。
Jelang Ramadhan先生はこれらの現象を実際に目にした体験も交えながら語り、学生たちは驚きと興味を持って聞き入っていました。
授業では、アニミズムやシャーマニズムといった全ての宗教に共通する要素についても学んでいましたが、実体験に基づいた話であったため、特に強い印象を残したようです。
また、ダヤック族の家族の中には、父親がイスラム教徒、母親がキリスト教徒、子供がヒンドゥー教徒という例もあり、宗教が異なってもカハリンガンを共有信仰とすることで互いの宗教を尊重し合い、平和に共存しているとの話もありました。学生たちにとって多くを学ぶ貴重な機会となりました。
レクチャーは英語で行われ、日本語で要約をつけましたが、英語を学びたい学生にとっても、直接英語で学べたことが嬉しかったようです。また、「英語で全てを理解できず悔しかったので、英語の勉強をさらに頑張りたい」という感想もあり、良い刺激となったようです。
【記事:大形里美(現代ビジネス学部)】