本物の刑事裁判では、何らかの最終判断が示され、それが有罪判決であれば、次は、刑罰の執行という段階に入ります。われわれ模擬裁判ゼミでは、模擬の刑罰執行こそしていませんが、先日の福岡地裁小倉支部での裁判傍聴に続き、今度は「本物の」刑務所の見学に出かけました。今回もゼミ生のレポートを紹介します。
3、4年生のゼミで、北九州市小倉南区にある北九州医療刑務所へ行きました。
現在日本では、全国に支所を含め70庁を超える刑務所があり、ほぼ全都道府県に1か所かそれ以上ずつ存在する計算になります。刑務所は、受刑者の特徴ごとに対応して収容しており、それぞれの施設が役割分担しながら刑罰の執行を行っています。今回見学した刑務所も「医療」の名がつく通り、医療措置を必要とする受刑者のための刑事施設で、全国に4庁しかない特別な刑務所のうちのひとつです。ここに収容されている受刑者は、M指標、何らかの精神疾患を抱え、医療措置の必要な受刑者ということになります。
そのため、施設内には刑務官だけではなく、医師や看護師などの医療従事者も多く在籍しており、迅速かつ適切な治療が施せる環境が整っています。また、必要な際には外部の専門医に依頼することもあるそうです。この施設では、窯業やモザイクアート制作などの機能向上作業や、社会生活への円滑な復帰を目的とした改善指導が行われています。以前はウサギを飼育しており、受刑者の精神状態の改善につながったと聞きました。
刑務所の中は「病院」という方がしっくりくる程に落ち着いており、私がイメージしていた刑務所とは程遠い雰囲気でした。確かに、2つのドアに挟まれた部屋を通る出入口のセキュリティシステムや、見学者に対してもスマホやたばこなどの持ち込みを制限しているなど、刑務所ならではの厳しさを感じる部分もありました。しかし、職員の方のお話を聞くと、受刑者に対してどれほどに更生して欲しいかという思いをもって職務にあたっているのかという様子がよく伝わってきました。(法学部3年本田)
先生からのコメント:
刑務所の見比べということはなかなかできませんが、「普通の」刑務所とは違う、「戒護」と「介護」の取り組みの様子がよく伝わる見学だったと思います。また、職員の方のお話では、出所者の帰住先の確保に苦労されているということでした。社会の中に居場所がある、ということは再犯の防止につながります。再犯の防止は新たな被害者を生まないことでもあります。出所者をどう受け入れるのかということが、次のステップとしての社会の役割になります。
今回はこの辺まで。また次回レポートをお楽しみに。乞うご期待。
作成者 法学部 鈴木博康(教授)